組曲『惑星』op.32 より 木星(ジュピター)

《木星の章》

グスターヴ・ホルスト
(イギリス)
1874-1934








〜 「木星」と「土星」 〜

ホルストの作品で多くの人に知られているものは、
この組曲「惑星」ただひとつと言っても良いでしょう。
そのことについて、後年、ホルストは不満を持っていたそうです。


本来、彼は、惑星のなかでも
『土星』を好んでいた、と言われるように、
「注意深く、集中してじっくりと研究を重ねる(占星術『土星』の意味するもの)」
タイプが見受けられます。

ホルストのなかで、イギリスという国を良くしていく方策としては、
国民が忘れてしまった、国に本来ある厳格さ、毅然とした姿勢、成熟さが、
何よりも必要だと感じたのでしょう。
そして、それを音楽を通じて伝え、気づかせることこそが、
自分の一生かけての使命だと思ったのでしょう。

それは、 王立音楽院で出会い、生涯の友となったヴォーン・ウィリアムズとともに、
イギリスの民謡の研究にいそしみ、
他の作品のなかに巧みに生かしていることからみても明らかです。


ホルストは、それ以降どんなに求められても、
「惑星」のような曲を書くことをしませんでした。




〜 今、あらねばならないこと 〜

新進気鋭であった「
シェーンベルク」「ストラヴィンスキー」らの、
影響を受けた、「惑星」を彼はなぜ創作したのでしょうか?


それは、ホルストが“ 今 ”に生きたからです。



時代は戦局に突入していました。

ホルストがいままで学んできたと思われる、
正しさ、なつかしさ、公平さでは、その時代を乗り越えていくことはできません。
彼は、自らの想いを超えた、あたらしい息吹を時代に吹き込むことになりました。

彼のなかから、まったく新しい音楽が誕生しました。

それが、組曲「惑星」です。

ホルストは、惑星となるこの曲のことを、
最初『モード・ピクチャーのシリーズ』と呼んでいました。
訳せば、『現代的世相』とでも言いましょうか。

彼は、過ぎ去った過去ではなく、現実をこそ見据え、
今の、そして自分の願いや祈りをこめて、この「惑星」を作ったのです。



木星(ジュピター)

木星は、占星術のなかでの最高の吉星です。

人が成功するためには、自分の努力だけでは社会に認めてもらえません。
その努力を評価するものこそ、必要になってくるわけです。

ホルストは、忍耐・試練・研究の星である、土星を好みましたが、
しっかりとしたその
「自分自身」の土台があってこそ、
木星の持つ“成功”“希望”“喜び”といった意味が、生きてくるわけです。
まったく努力しない人間には、
いくら木星のエネルギーが、降り注がれている人間であっても、
成功はありえません。
たとえ、一時成功して名誉を得たとしても、
実力を伴わないものは、自ら堕落してしまうのです。



繰り返し、民衆が彼にこの曲を求めたのには理由があります。
それは、惑星のなかでも最大の規模を誇る、
木星(守護神は主神ゼウス)の星の波動こそ、
人々が求めた幸福の象徴だからです。

ホルストは、棚ぼた的な幸福を嫌いました。

彼は、「惑星」を組曲としての演奏にこだわり、
ひとつだけ(たとえば木星のみ)を、演奏することを許さなかったそうです。


しかし、彼の人生にとっては、
本当に必要な要素であったと思われるのです。

ジュピターのなかでも有名な冒頭のテーマは、
まさに苦労を重ねた、彼の人生の夜明けを表すものでありました。


この曲は、必然的に生まれて参りました。
それは、神が彼にこの曲を作らせたとしか思えません。


ホルストの人生が、幸福であったかどうか、
それは私には分かりません。
しかし、鑑定を続けるうちに、
彼がいかに偉大な作曲家であるということが、分かりました。


まっすぐで、誠実、深遠である彼の人生、彼の音楽は、
現代を生きる私たちに、必ずや何かを教えてくれることと、私は信じます。



この曲を聴くと、こんなことが起こります。








and more・・・
(下記のコントロールパネルの音を消してからお聞きください)



〜 そして、ふたたび・・・ 〜

1961年、指揮者のカラヤンがウィーン・フィルの演奏会で
この曲(組曲『惑星』)を取り上げたことで、
しばらくの間、埋もれていたこの曲が、ふたたび脚光を浴びました。

それはこの年、4月に世界ではじめて、人類が宇宙に旅した年でありました。

ジュピター


◎実際の木星の姿について
木星には、大地というものがありません。巨大なガス体です。
90%が水素。10%がヘリウムです。
これが太陽とおなじ成分であったことから、「太陽になり損ねた惑星」などと呼ばれています。
見事な
大赤斑(だいせきはん)は、自転周期約10時間というスピードによって、
大気や雲が激しく動いていることによります。
衛星を16個もっており、また土星のような薄い輪もあるのだそうです。
暦の十二支は、この星の公転周期が12年ということから、考え出されたものです。





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